N検イベント

中高女子教育における時事指導

横浜英和女学院中学高等学校 教諭 髙坂健吉先生

 横浜英和女学院の髙坂です。本校は2010年に創立130周年を迎える、日本の女子教育の中では比較的古い学校です。教育の一環として「自立した女性を育成する」を、ここ10数年来教育のモットーとしています。先ほどキャリア教育のお話がありましたが、わたくしどもの学校では「キャリアを持って自立した人生を送れるように目標を持たせる」、もう1つはキリスト教の精神に書いてある隣人愛ですね。「隣人の生き方を尊重する」ことを学校教育の中心に据えています。

 キャリア教育では、今、何が起きているか、時代を読んで考える力をつけさせていくことが、社会科や公民科の課題と考えます。私自身は現代社会、政治・経済と中学公民の授業を持っておりまして、中3年生と高3生を通じて、N検にどう取り組んでいるかの話を進めていきたいと思います。

■N検のテキストは、教科書や資料集を補完するいい教材

 公民の授業で「個人と社会」の単元があります。生徒は将来大人になるのですが、15歳になった時に、それをどう考えていくかがテーマです。特に15歳は子供か大人かと考えさせる教科書があるのですが、たまたま国民投票法案が(投票権を)18歳に下げました。N検のテキストでも、民法の成人年齢の引き下げの問題を取りあげています。中学3年生のあなたたちは、3年たったら大人になると考えるのですが、教科書や資料集にはタイムリーなネタがありません。そうしますと、「ニュース検定公式テキスト3・4級」の「あなたは『大人』?」(P144)のイラスト部分を見るだけでも、色々な権利を得て、義務もあるとわかります。さらに「記事NEWS」の「成人18歳から?」(P145)を読んで、生徒たちと考えていくと時事的な考え方が出来るようになります。中3生はまだ大人ではありませんから、私はあれこれとは言いません。ただ、生徒たちが考えるきっかけとしてはとてもいいものだと思います。N検のテキストは、中学生にわかるような言葉で書いており、教科書や資料集を補完するいい教材だと思います。

 高3生の現代社会の授業では、現代社会の特質を勉強した後に、政治経済、国際政治、国際経済と進めていきます。週に2時間しかありませんので、授業はなかなか進みません。女の子は板書が大好きですから、1字1句きれいにノートに書くわけです。書くだけで満足して、内容を覚えていません。10何年間やっていても直りません。そこでどうしようかと考えて、逆に板書を冊子として作成して印刷し配ったのです。「私の話を聞いてください。聞いて書いてください」と聞いて書くことを義務づけたのです。

 そんなスタイルに授業を変えていく中で、2008年に石油価格が高騰しました。高騰した原因と国民生活への影響を考えさせたのです。サブプライム問題が起きて、行き場のなくなった投機マネーが原油先物取引市場と穀物市場に向かい、その結果穀物と原油が上がったというのが結論です。サブプライムローンの話は、実は一般の大人もよく理解できていない問題でした。生徒に説明する場合、教科書には載っていないし資料集は難しい。そこで、ここでもニュース検定公式テキスト3・4級の「サブプライムローンと金融危機」(P70)のイラストを活用しました。子供たちは言葉よりもイラスト、図で書いた方がよく理解してくれます。

 生徒は「リーマンブラザーズ」という言葉はよく覚えています。リーマン兄弟が作った金融会社が倒産したのだなというイメージを持ってくれているだけでもいいかなと思います。あとは食糧危機ですね。今の生徒は文章を読むより、テキストのイラストのように目で見てすぐにわかることに飛びつきます。

■高校生に時事問題に関心を持たせるポイントは、わかりやすい言葉と図表

 2007年度の神奈川県教育委員会のサンプル調査で、高校の公民科について、勉強が役に立つと思っている生徒は8割いました。そこで、授業で用いる教材を精選し、内容を理解させた上で解釈を加え、生徒のまとめる力と表現する力を育成することが必要だということがわかってきました。生徒は新聞やテレビの報道はほとんど見ていません。肌では現実の政治・経済や社会情勢を感じてはいます。私の感じでは、女子生徒は政治が好きではないようです。どちらかと言うと経済が好きかなという印象です。こういうバックボーンがある以上、授業の組み立てややり方を変えないといけないと考えました。

 時事知識が低下する高校生に、いかに関心を持たせるかのポイントは、わかりやすい言葉と図表です。説明をする時に難しい言葉、例えば「破綻」という言葉は駄目ですね。「金融機関が破綻した」という言葉を使っていると、生徒は理解できません。わかりやすい言葉と図表に置き換えて説明すると、興味を持ち始める生徒が出てきました。

 こうした背景には大学の入試が多様化し、ここ最近定着したAO入試の多くが小論文、口頭試問、面接を課すようになったことがあります。学部によっては現代社会、政治経済の知識が必要になってきますので、生徒が時事問題に敏感になってくるのも当然です。

 そこで、現代社会の定期試験に期間を区切って国内外の時事問題を簡単な穴埋め形式で出題することにしました。もちろん中3生にも出題します。中3生に出す問題と高3生に出す問題はほとんど同じなのですが、答え方が違うのが特徴です。 すると中3生も政治や経済に興味を持ってきたのですが、サブプライムローン問題を出題した時には重圧がかかりました。なぜならば、それだけ注目されていたからです。今の生徒は残念ながらテストに出題しないとやらないというのが現実でして、出題して関心を持たせる。書いて覚えてもらうというやり方をしてでも、この問題を理解して欲しかったわけです。

■N検の補講で今後の授業の組み立てを考える契機に

 一方で小論文対策もしていますが、今の生徒は文章を書くのが苦手です。私の授業では全員に小論文を書かせる課題を与えて、それを点数化します。最初はネットの文章をほとんど丸写しですが、指導を続けていくとよくなってきます。古典的なやり方ですが、新聞には朝日、毎日、読売いろいろありますが、よかった記事を400字程度にまとめさせるようにしています。なぜかと言うと、そこには記者が言いたいことが絶対あるはずだと思うからです。それを読むことによって国語の読解力は良くなります。要約するだけではなくて、できればあなたの意見を書きなさいと添削指導することで、時事問題も覚えます。その結果、時事用語の語彙力が身につきます。もう1つが読解力と記述力の養成です。最後に添削することによって、文章の組み立てと表現力向上という地道な作業ですが、これを数年やっていると格好がついてきます。

 このような取り組みの中で、N検をどのように使っているかと言いますと、キャリア教育の一環として、N検の資格取得を奨励しています。2008年6月に初めて実施したわけですが、受検者は5、6人の予想が、30人近くが受検してくれました。こちらもやる気が出てきます。

 検定ですから、いきなりやれと言っても無理です。ただ、5級や4級はできると思いますが、3級あたりになってくると補習をしてあげないと難しいです。検定前に必ずニュース検定の補習をやりますが、過去問をやるのではなくて、2級、3級、4級、5級別にテキスト、問題集の過去問を解いてきなさいと指導しています。生徒が理解できなければ、もう1回授業の形式で説明するよと言ったら、結構出席してくれました。これはすでに授業で説明したのですが、生徒が理解していないということは、自分の授業のやり方を変えなければいけないと学ぶ契機にもなります。

■これからは「時事力」(時代を読み解く力)が必要

 最後に「時事力は必要だ」ということですが、今の子供たちはインターネット、ITの高度情報社会に生きています。私は驚いたのですが、補講をした時に新聞記事を使うからと言うと、数人の生徒が「新聞をとってません」と言います。お父さんは会社で読むからいらないと言うし、家庭ではなぜか読まないのです。新聞を読まないとますます活字離れが進みます。活字離れによって、読解力の低下に拍車がかかります。当然時事力も低下するという悪循環ですね。

 皆さんも是非N検のテキストを使って、効果的な時事問題の学習をしてみてください。テキストは作図やイラストを使ってわかりやすい表現をしています。大学に進学して時事力が弱い学生さんにもいい教材だなと思っています。また、最新データが盛り込まれているので、生きた勉強ができます。各テーマのキーワード解説もあり、必要な用語を網羅しています。もちろん、現代社会や政治・経済の入試科目や、小論文の各分野で求められる知識の学習が可能です。

 こういうことに取り組んでいますと言うと、他校の先生方も興味を持ってくれて、お世辞抜きで「テキストは教材としていいものだ」とおっしゃってくれます。ただ、検定導入は各学校の事情があります。本校も女子中高ですので難しいところはたくさんあるのですが、このようにしてやっていけば、受検者も少しずつ増えていくのかなと考えています。