中学校・高等学校 活用事例

 神奈川県立新栄高等学校では、2年生の「選択公共」の授業で、ニュース検定の公式テキストを使っています。ニュース検定協会事務局スタッフが、2023年10月に授業を見学し、その様子をレポートにまとめました。

 この日の授業に出席した生徒は、1年の時に「公共」を学んだ2年生。1学年360人のうち、2年でも公共を選択した90人を3クラスに分け、2人の社会科教員が週に2回授業を行っています。

 和田守総括教諭(47)が担当しているのは32人。授業ではN検テキスト発展編を教材として授業を行っています。2学期に入って10回目の授業のテーマは「日本銀行」。テキストを開きながら「日本銀行は何をやっているところですか」と生徒に問いかけると、「お金を作っている」という声が上がりました。「紙幣の発行だね」とうなずいて日銀の4つの役割を黒板に書き出し、「間もなくお札のデザインが変わりますね」「2千円札を見たことのある人は」など、生徒の興味を引きながら授業を進めます。

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日本銀行(日銀)の役割
(時事力Basicの例)

 N検テキストには「時事力Basic」というコーナーがあり、これは各テーマに関する社会制度や、歴史的経緯を説明するものです。公民科の教科書と一致する部分も多く、1年生の公共の復習も兼ねて触れるようにしているとのことでした。「選択公共」の狙いは、1年生で学習した内容をおさらいしつつ、実社会の動きを理解し考えることにあるようです。

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 黒板に日銀、民間銀行、国民と企業の関係を大きく図示して、「一番大切な役割は市場に出回るお金の量を調節して景気を安定させることです」と赤いチョークを走らせると、生徒は熱心にノートに書き取っていました。2013年以降の日銀の金融緩和政策については「先生のような公務員の給料は景気に左右されないが、時給が少しずつアップしてアルバイト代も上がったので、皆さんは恩恵を受けたかもしれないね」とかみくだいて説明していました。難解な金融政策や景気の仕組みをわかりやすく伝えたい、そんな思いがあふれた50分に感じました。

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(理解力アップシートの例)

 週に2回ある授業のうち、1回は生徒が時事のニュースについて発表する時間を設けています。理解度をチェックするため、テキストに準拠した穴埋めプリント「理解力アップシート」も活用しています。同校は3年で政治・経済を必修にしていることから、2年の選択必修をはさんで、公民科目を切れ目なく学習できるカリキュラムになっています。公民科担当15年の和田教諭によると「教科書に加えて検定のテキストを3年間活用することで、公民科目を体系的に学ぶことができる」そうです。 受講していた男子生徒(17)は「ニュースが好きでこの授業を選択した。ニュース検定のテキストは図表が多く、先生の授業もわかりやすい」と話してくれました。

 滋賀県立堅田高等学校で「公共」の授業を担当している後藤憲治先生※は、ニュース検定公式テキスト&問題集「時事力」基礎編(3・4級)を副教材として利用しています。内容を時系列に沿って記載してあることが多い教科書に比べ、ニュース検定のテキストは特定のテーマについて、その内容や背景を詳細にまとめていることが強みだと先生からは高い評価をもらっています。

 特に、国際社会の現状について学習する際にテキストを多く利用いただきました。「核兵器と向き合う世界」「平和な世界どうやって」(画像左)などのテーマは、情勢や課題がわかりやすく記載されており、生徒の理解も進みました。

 テキスト内のミニコラム「Yes?No?」(画像右)も好評です。賛否が分かれる社会問題についてそれぞれの意見を簡潔にまとめてある「Yes?No?」は、考えることが苦手な生徒にもわかりやすく、グループワークの素材に活用しました。

  「ここ数年、テキストを図書室において欲しいという要望があるんです」生徒からも評価されているエピソードを話してくれました。授業でニュースに触れたことがきっかけでニュース検定の内容に興味を持つ生徒が、検定を受けた後に他の級の内容も見てみたいと図書室での購入を希望する声がしばしば寄せられています。その証拠に図書室には、各年度版のテキストがラインナップされています。

 堅田高校は就職希望者が毎年一定数います。就職志望の生徒には社会人になる前から社会に関心をもち、社会課題をしっかり勉強してほしい。後藤先生はそう話してくれました。

 就職試験で他校の生徒と競合した際にもテキストでの学習は役立っています。「最近関心のあるニュースは?」という質問にもしっかりと回答できます。また、検定に合格すれば調査書にも記載でき、「ニュース検定」が面接の話題としても取り上げられるので、就職活動に大きなアドバンテージとなると教えてくれました。

※2022年度後藤先生は公共を担当されていましたが、2023年度は政治・経済を指導しています。この政治・経済の授業でもニュース検定テキストを活用しています。

 長野県小諸商業高校(長野県小諸市)では、「公共」を履修している1年生133人が、夏休みの課題として、ニュース検定の「基礎編テキスト&問題集」の練習問題に取り組んでいます。夏休みに入る前に、社会科の小池綾先生が練習問題の解答と解説を切り取ったテキストを生徒に渡し、生徒は各自学習を進めます。夏休み期間中は、毎週水曜に生徒のパソコン端末に問題を配信し、生徒は翌週の火曜までに解答を返信します。問題は生徒の関心の高い政治や社会・環境分野から、毎週3級と4級の計15問を出題。夏休み中でしたが、解答率は95%と高く、4級の問題はスイスイ解けたようで正答率は8割以上だった一方、3級はやや難しかったようだといいます。

 小池先生は3年生の「政治経済」の授業も担当しており、18歳選挙権が実現し、成人年齢が18歳に引き下げられたことから、授業では選挙の仕組みや課題について特に力を入れています。生徒に接して感じるのは、ジェンダーやセクシャルマイノリティーなど性の問題に感心が高い一方、ロシアのウクライナ侵攻など国際情勢については、知識にばらつきがあることです。小池先生は「時事問題や実用知識がわかりやすくまとまっているニュース検定のテキストは、生徒が興味関心を引くきっかけになる」と話しています。

 公共の授業は教科書を中心に進め、テキストに触れることは多くありませんが、小池先生によると、公共の教科書はやや観念的な内容が多く、身近なニュースを中心に構成されているテキストの方が教材として使いやすく感じるとのことで、2学期の期末試験から、テキストの練習問題を活用したいそうです。小池先生は「生徒には生きていくために必要な知識を身につけさせたい。新聞記事を素材に編集されたテキストは時事的な内容が体系的にまとまっていて、情報に偏りがない」と高い評価をいただきました。

 「ニュース検定のテキストは情報が新しいので、副教材として使いやすいですね」

 そう話してくれた杉並学院高校(東京都杉並区)の井上直先生は、ニュース検定をフル活用しています。井上先生は1年生で「公共」を担当し、基礎編のテキストを教科書と並行して使っています。定期試験ではテキストの練習問題から範囲を指定して出題しました。

 発展編のテキストは2年生と3年生用です。2年生は大学入試までに2級以上を目指すようアドバイスしています。3年生は政治経済の授業や小論文で使っています。

 10 月のロングホームルームでは「ニュース検定模試」の時間を設け、1年生に3級の問題に挑戦してもらいました。ニュース検定への受検ハードルを低くして、学年末の2 月検定を受けるよう勧めています。

 「月イチ時事サポート」の教材も役立てています。「課題用プリント」を夏休みと冬休みに配付し、ニュース検定を受ける生徒は「理解力アップシート」を検定対策用に利用しています。賛否の分かれるテーマについて考える「Yes? No?」はグループワークで活用し、主体的で深い学びに結びつけています。

 理系志望の生徒が、大学の推薦入試の面接で、ニュース検定の2級に合格していることを聞かれ、「大学で研究テーマを決めるために時事問題を勉強した」と答えて合格したそうです。井上先生は「時事力は文理選択に関わらず必要。理系の生徒にこそ、ニュース検定に取り組んでほしい」と熱く語ってくれました。

 2022年4月から新学習指導要領で高校社会科が大きく変わり、「歴史総合」「地理総合」に加え、公民科目として「公共」が新設されました。「現代社会」に代わって必修科目となった公共は、高校2年までに履修する必要がありますが、1年目の今年は、指導に苦心している先生が多いようです。

 昭和女子大附属昭和高校(東京都世田谷区)は、1年生約220人が公共の授業で、時事問題への理解度を測る「ニュース検定」の公式テキスト発展編(1・2・準2級)を副読本として活用しています。

 6月の9回目の授業は、ジェンダーがテーマでした。社会科担当の阿部卓朗先生は、スライドを映し出しながら、「男らしさとは何か、女らしさとは何か」と生徒に問いかけました。授業で使っている教科書には、LGBTや同性婚などキーワードの説明はありますが、性的少数者をめぐる最新の社会情勢は盛りこまれていません。そこで、同性婚を巡る裁判や、性的少数者のカップルを婚姻に準じる関係と公的に認める「パートナーシップ制度」について、検定テキストを開いてポイントを解説しました。阿部先生は「生徒にはニュースを学ぶことで今を知り、考える力をつけてもらいたい」と話しています。

 5月下旬の中間テストでは、作問にテキストをフル活用しました。教科書では少子高齢化が進む現状と、社会保障制度の説明が別々に編集されていますが、検定のテキストは、暮らしをテーマに人口減少と社会保障の財源問題は切り離せない問題としてまとめています。阿部先生は検定テキストを参考に、高齢者人口がピークを迎える2040年度に医療と介護の社会保障費が大きく伸びる見通しについて、データやグラフを読み解く問題を作成しました。また、テスト前、インターネット上の誹謗中傷対策を目的に、侮辱罪を厳罰化する刑法改正案が衆院本会議で可決したことから、高度情報化社会を考える問題の中に、侮辱罪を加えたそうです。

 阿部先生は、「検定のテキストは毎年発行され、最新の情報が盛りこまれているので、ニュースに関心を持つ生徒が増えた」と検定のテキストを使うメリットを話してくれました。ニュース検定は希望者受検にしていますが、高校1年で準2級に挑戦する生徒もいるとのことで、授業を通じて社会の問題に関心を持ち、主体的で深い学びに結びついているようです。

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって以降、国際情勢に関心を持つ生徒が増えたそうです。ニュース検定の公式ホームページの「季刊ニュースファイル」6月号では、学校教材用にウクライナ侵攻開始から3カ月間の動きをまとめた特別編を無料公開しています。

 「本校でのニュース検定の受検は、ミラクルの連続です。」

 そう語ってくれたのは、今年でニュース検定を利用して15年となる、花巻東高校の松本先生です。

 花巻東高校では、毎年進学コースの1年生全員が、検定に挑戦しています。これまでの検定の結果を振り返ってみると、国公立大学を目指す生徒がN検には不合格となった一方、あまり成績が振るわない生徒が合格したり…と、先生方の予想を覆す、「ミラクル」な結果が出ることが多くあるそうです。他の検定と比べると、学校の成績にはあらわれない生徒の能力を引き出す効果があるのも、ニュース検定の魅力のひとつかもしれません。

 ニュース検定に挑戦することで、「学校のテストは苦手だけれど、ニュースや時事問題には興味関心がある、得意だ」という、生徒の新たな一面の発見があるようです。逆に生徒自身にとっては「学校のテストは点が取れるが、時事問題への意識関心が不足していた」という気づきにも繫がっており、様々な発見があることも受検の意義だと松本先生は強調してくれました。

 首都圏などの都心とくらべ、車移動が基本の地域では、電車内のニュース配信や中吊り広告など、ふとした瞬間にニュースが目に飛び込んでくる機会が少ないそうです。生徒が時事問題に触れる機会を多く作るためにも、検定に取り組んでいると松本先生は話してくれました。

 花巻東高校に限らず、中学や高校では探究活動の充実により、生徒の調査発表能力は高まっているようです。その反面、基礎知識がおろそかになっている生徒も増えているようで、松本先生は危機感を感じているようです。探究活動をさらに深い学びにするためにも、ニュース検定で確かな社会知識を身につけ、興味関心を高めていきたいと、今後について熱く語っていました。

 広島県にある私立盈進中学校・高等学校は、この10年ほどニュース検定に取り組んでいます。2021年11月の検定では最難関の1級に挑戦する生徒もあらわれました。岩谷勇一郎先生(以下岩谷先生)と1級に挑戦した高校3年生の栗原こころさん(以下栗原さん)に話を伺いました。

 栗原さんは4月から大学で動物看護士になるための勉強をする予定とのことです。

 将来は「トラブルがあっても落ち着いて対処できる人になりたい」そうですが、すでにしっかりと自立した印象がありました。

――1級に挑戦してどうでしたか?

栗原さん:自己採点はまだしていませんが、手応えは…記述問題は解けたと思いますが、選択問題が難しかったです。(インタビュー時は合否未発表)

学校でニュース検定を紹介していたので高校1年生のときに3級から挑戦しました。SNSで流れている内容はすべてが正しいわけではありません。「何が正しいのか、必要な情報を選択できるようになりたい」と思いニュース検定に挑戦しました。自分は流されやすい性格なので…。

「始めは3級だけでもいいかな」と思っていたんですが、合格すると嬉しくて、もっと上を目指したくなり、1級まで挑戦しました。

(栗原さんは高2で準2級、高3で2級に合格しています)

岩谷先生:メディアリテラシーは授業でも学習するようにしています。世の中には情報がたくさんあります。時にその中にフェイクニュースが混じっていることもあります。 その際に世の中の情報を読み取る力がないと惑わされてしまいます。栗原さんはニュース検定の学習を通じてそういったことを意識できていると思います。

――ニュース検定に挑戦して何か変化はありましたか?

栗原さん:ニュースや新聞を読むときに(内容を)理解しやすくなりました。正しく読めるようになった気がします。

以前は、ニュースを見ても「そういうことがあるんだ」と流してしまっていることもありましたが、ニュース検定を受けてから「自分で詳しく調べてみようかな」と思うように変わりました。

岩谷先生:社会で起きていることに関心を持つきっかけとしてニュース検定に取り組んでいます。

――では栗原さんは先生たちの狙い通りというわけですね!

岩谷先生:加えて、総合型選抜では面接や小論文が必要となりますが、そこでもニュース検定で学んだ内容は役立つと思います。学校現場での評判は良いです!

大学のアドミッションポリシー(現代の様々な社会現象とその分析に強い関心と意欲を持つ)などがいい例ですが、いま大学が求めている生徒像に近づけると思います。取り組みの中で情報をかみくだいて読み取る力がついていると思います。

――栗原さんはすでに進路が決まっていると伺いましたが、大学入試には役立ちましたか?

栗原さん:面接で「気になるニュース」を聞かれたのでそこで役立ったと思います。その時は、動物の多頭飼育問題について取り上げました。

大学に進学してもニュースに関心を持っていきたいと思うし、これまで学習して積み重ねたことは大学での勉強にも役立つと思います。

――10月に選挙がありましたが、栗原さんはどうされました?

栗原さん:(広島県では衆院選に続いて県知事選挙があったため)2回とも投票に行きました。普段からニュースを調べていたので、政策を理解した上で候補者を選ぶことができたと思います。

岩谷先生:学校での主権者教育の効果もあったと思います。選挙のために(他県から来ている生徒もいるため)寮から帰省して選挙にいった生徒もいました。

――ニュース検定で学習した内容が主権者教育にも繫がっていると私たちも考えています。ちなみに検定はどのように勉強されたのですか?

栗原さん:テキスト(ニュース検定公式教材)の答えだけ暗記するのではなく、解説部分も読み、理解するようにしています。

岩谷先生:栗原さんのテキストを見たことがありますが、重要部分にアンダーラインを引くだけでなく、自分なりの書き込みを加えるなど工夫して学習していました。しっかりと思考して勉強しているので、答えを暗記するだけでない学習になっていると思います。

――ぜひそのノートは見せていただきたい!最後に、これから検定に挑戦する方にメッセージをいただけますか?

栗原さん:ニュース検定を受けることで身近なニュースに興味を持てる、理解できるようになるので、ぜひ受けてほしいと思います。

岩谷先生:検定に挑戦することで視野広がり、社会への関心が高まると思います。社会への関心は生きていく上で必要なので、多くの人に挑戦して欲しいと思います。(栗原さんのように)合格がさらなる学習の励みになるはずです。

――ありがとうございました!

 琵琶湖畔の東近江市にある滋賀学園は私立の中高一貫校です。国公立大や難関私大進学を目指すII類、大学等への進学、福祉関係の資格取得、情報通信技術を習得するI類、全国レベルのアスリートを育てるS類まで、進路に応じた3類系5コースがあり、社会の変化に対応できる多様な人材育成を目指しています。

 資格取得に力を入れている同校は、2020年からニュース時事能力検定にチャレンジしています。I類の選択授業で「時事能力探究」を学んでいる3年生91人が2020年11月に4級を受検しました。この選択授業では、検定合格を目標に公式教材(基礎編)の解説と練習問題に取り組んでいます。

 ニュース検定を導入した狙いについて、教務部⻑の山田和彦教諭は「社会の中で役立つ知識や幅広い視野を手に入れてもらうため」と話しています。検定合格が目標ですが、生徒と先生、生徒同士のコミュニケーション活動も重視しており「公式テキストは通常の社会科の教材と比べて内容が現代的で、生徒に身近なテーマが多いので、質問や意見が活発に出る」と手応えを感じています。

 その一方で「生徒によって日々のニュースに触れる頻度に違いがあり、定期テストの結果を見ると、習熟度に差があるように思う」とも話しています。全員合格を目標に、2021年度も11月の検定試験で77人が4級を受検しました。今後は授業の中でSDGsなども取り上げ、より生徒の視野を広げ、進路選択の幅を広げていきたいとのことです。

 最近では授業にタブレット端末を利用しています。ニュース検定の公式教材は、電子版のラインナップもそろい、活用の幅が広がりました。山田教諭は、「テキストを基にICT教材を活用して、現代社会の問題点を各自で分析できるような授業を考えたい」と話しています。

 同校は来年度の入学生から現在の3類系を「グローバル特進コース」「未来開進コース」「アスリート躍進コース」に改編します。現在のI類にあたる未来開進コースでは、「文理探究」という探究活動を中心とした授業の中で、ニュース検定をはじめとする各種検定試験に挑戦していく予定です。大学進学を目指す生徒には上位級へのチャレンジを勧め、就職希望者にも履歴書への記載をアドバイスするとのことです。

中3と高1の全員がN検テキストを授業で活用

 中高一貫の男子校である早稲田中学校・高等学校は、昨年創立125年を迎えました。在籍数は中学校900人、高校900人の約1800人で、高3生は半数以上が早稲田大学に進学します。ニュース検定の取り組みは中学3年の社会(公⺠)で公式テキストの基礎編、高校1年は現代社会で発展編をそれぞれ採用し、副教材として利用しています。社会科担当の土屋勝英教諭によると、社会科では中高6年間を通してニュースを読み解く力を養うという目標があるようです。

 中学校の内からニュースに触れる機会を多くつくるため、中学3年生では中間テストの問題にニュース検定のテキストを参考にした問題を出題しています。また、裁判の傍聴や首相官邸の見学などを実施、生徒に”生の現場”を見せるなど、知識と現実を結びつける活動をしています。 高校1年の現代社会ではニュース検定の公式テキストを活用していますが、東京証券所や日本銀行の見学などを実施し、中3時の延⻑としての活動をしています。

 土屋教諭が担当する授業では、授業の最初に毎回1人ずつ、今日のニュースについて5分間発表させ、時事問題について考える時間を設けています。生徒が取りあげる素材はヤフーニュースやLINEニュースなどスマートフォンで検索したニュースが多いそうですが、フェイクニュースを取りあげてしまう生徒もいて、メディアリテラシー教育の難しさを感じているとのことです。「ページをめくれば信頼できるニュースが目に飛び込んでくる新聞の良さを教えたい」と話します。

ニュース検定合格だけでは終わらない

 土屋教諭は「生徒の発達には個人差があるが、中高6年間でニュースを読み解く力を養うことで、心の成⻑が感じられる。ニュース検定で学ぶ内容は毎年変わるので、級に合格しても勉強には終わりはない」と話します。大学進学後もニュースに関心を持ち続け、これまで全国紙の記者や法曹界に進んだ教え子も数多くいるということです。

 検定は中3と高1で希望者を募り、今年は11月に実施予定です。受検する生徒の時事問題への関心は高く、毎年級を上げて挑戦している生徒もいます。ニュース検定公式テキストの利用や検定受検が、より深く詳しくニュースを知り、考察するきっかけとなると嬉しいですね。

ブラッシュアップウィークでニュース検定に挑戦

 大阪府北部の中核市、豊中市にある私立大商学園高校は、明治20年創立の伝統校です。普通科と商業科がある男女共学校です。「自由の尊重」「責任の完遂」「人格の高揚」の3つの教育方針を掲げ、全国レベルの部活も多く文武両道を目指すエネルギッシュな学校です。19年には新校舎が完成し、最新鋭のICT機器も全教室に導入されました。

 ニュース時事能力検定に取り組み始めたのは2013年から。以来多くの高校生が挑戦してきました。2018年からは大学入試改革を意識した学習プログラムとして「ブラッシュアップウィーク」が導入され、その一環として、英語検定や漢字検定そしてニュース検定を高校1年生と2年生が学年をあげて挑戦しています。平常の授業に加えて検定直前の数日間を重点学習期間として7時限を設け、受検対策を行った結果、ニュース検定4級に380名、3級に283名がそれぞれ合格(18年)。優秀な成績を収めたとして、協会の設ける年間表彰にノミネートされました。普通科特進コースの3年生はさらに選択授業でニュース検定に挑戦する機会が設定されており、準2級まで挑戦する生徒もいます。

検定の合格が大学の合格に

 ニュース検定を使った授業を担当している松折広平教諭は、「公式テキストはテーマごとにわかりやすく編集されていて使いやすい」と評価し、「級を持っていない生徒に成功体験を積ませ、検定に合格することが大学合格のゴールにつながる」とニュース検定に取り組む意義について話します。

 実際に18年度にニュース検定に合格した2年生は、大学のAO入試(当時)の面接で、時事問題について質問された際にも、ニュース検定で学習した内容を思い出し、面接官としっかりとコミュニケーションできたことが評価されて合格につながったというエピソードもあるようです。ニュース検定は全国400を超える大学・短大の大学入試で、出願資格や、選考の際の点数加算などの優遇がありますが、関西エリアの大学でさらなる評価を期待する声もいただきました。

※入試での優遇校はニュース検定の公式サイトに掲載されています。2021年秋に最新の情報を公開予定です。

 東京都港区にある正則高等学校は、長くニュース時事能力検定に取り組んでいます。政治経済の授業内では公式テキストも活用していますが、2019年度よりその内容を大きく発展させたという報告をいただきました。いわゆるアクティブラーニングを実践し始めたとのことで、今回授業リポートを書いていただきました。 公式テキストの活用方法も含め、実際の授業の様子や、進行上の課題などが詳細に記載されているリポートですので、ぜひコチラよりダウンロードしてご照覧ください。

 「25歳で輝いている人に」。これが本校の目標です。大学入試の先をも見ているのです。そのためには、高校時代から「世の中にはどんな活躍の場があるのか」「今の社会の課題は何なのか」を考え続ける必要があります。毎朝20分、新聞を使って日本や世界の出来事を知り、グループで発表し合い議論する朝学習を進めており、その背景や基本事項をニュース検定のテキストを使って学んでいます。

 さらに、身についた時事的な力は、ニュース検定を受けて確認します。1年生は全員受検で、その後は級を上げることを勧めています。柔軟な思考力が身につき、人生を切り開くことに役立っているのです。大学受験とともに、就職した卒業生からは「社会に出てとても役立っている」「ニュース検定を受けたことでアンテナを高く張ることができるようになった」と感謝の声が届いています。

 正智深谷高等学校では「土曜講座」で、ニュース検定公式テキストを教材にしている。ニュース検定協会事務局スタッフがその授業を見学しに行った。

 授業は大きく①個人ワーク②ペアワーク③グループワーク④グループワーク発表の流れで進む。

 まず、生徒は3分でテキスト1ページの中から、重要と思う内容を抜き出す。次の5分間で、抜き出した内容をペアでお互いに問題を出し合い知識を定着させる。田中玲央磨教諭は「まずは、その場で知識を定着させることが重要」と話す。知識が定着した上でグループワークに移行することが効果を何倍にも上げさせる。

 見学したグループワークでは「日本は難民の受け入れを増やすべきか」「外国人労働者を増やすべきか」「夫婦別姓を認めるべきか」「同姓婚を認めるべきか」という課題のうち1つを、各グループにわかれて議論した。司会や書記などグループ内で役割分担し、最後に総意を発表者が述べる。チームワークも重要になる。テキストとともにタブレット端末も駆使して意見交換を深めていく。発表では、結論とともに、理由や具体例、解決策も提示する論理力を養う構成を心掛けているという。

 あるグループは「夫婦別姓」について、「旧姓のままならば働きやすいが、家族の一体性が損なわれる可能性もあり、各家庭が自由に選択できる制度にするのがいいと思う」などメリットとデメリットをそれぞれ提示。解決策も提案するなど、「考える力」を育成する授業だと感じた。

 「社会に関する知識をしっかりと蓄え、小論文指導に役立てることができる」と田中教諭は話す。授業の流れも「新任教員など生徒を引っ張る力が弱い教員が担当しても、生徒の力を伸ばせるアクティブラーニングの流れを探究した」という。

 ニュース検定公式テキストとアクティブラーニングの手法はとてもマッチしており、誰もが担当可能な授業を構築できると感じた。

 本校では、中1、高1・2生の授業で公式テキストを副教材として採用し、高1全員、高2の政治・経済選択者にN検受検を義務づけています。18歳を大人にして投票所に向かわせる授業を行うことは、教育現場に求められている喫緊の課題です。しかし、18歳になった生徒が投票にいざ行くとなっても、政治の課題が分かりません。すると、投票に行く気も起こりません。「今」の政治について、日本の教科書にはほとんど書かれていませんが、公式テキストには、選挙権を持つ生徒達が知っておかなければならないことが載っています。

 本校ではテキストに対応して授業を展開し、「月イチ時事サポート」も利用しながら、時事問題学習を行っています。単に知識を得るだけでなく、テキストから一歩踏み出して、社会と自分を結びつけて考える、調べることができるということはとても重要です。未来の社会をつくっていく生徒達がN検の勉強を通じて時事問題から学び、社会の一員として働きかける力を育てていくような授業を、これからもしていきたいと思います。

 本校では高3「時事問題」の授業でN検テキストと問題集を教材として採用し、N検の受検を推奨しています。この授業はテキストをもとに課題を発見することから始まります。具体的には各単元をグループ内でまとめ、新聞記事やテレビニュース、タブレット端末も活用して幅広く情報を集めます。政治的中立性の観点から取り扱いにくく、意見を集約しにくい内容も多くあります。1人1台のタブレット端末を使って匿名で考えを公開できるAIアプリを活用することによって意見を集約しています。この方法は多様なものの見方を身に付ける上で有効で、さらに基礎知識を確認する上で大変役立っています。

 「今起きていることにどのように興味関心を持ってもらうか」は常に課題でしたが、N検を導入したことで、生徒の反応は確実に良くなっています。生徒からは「家族でのニュースの会話が増えた」「新聞の一面が気になるようになった」などの声が寄せられています。市邨学園の創立者である市邨芳樹先生が仰った「世界は我が市場ならずや」にもある通り、世の中を知る事でそれを自らの力とし、世界で活躍するためにも「N検」の有用性を改めて感じています。

 時事問題が必須の中学受験を経験してきた新入生はニュースへの関心が強いのですが、入学を境に部活やスマートフォンのゲームなどに関心が移り、みるみるニュースから離れていきます。そこで、2013年度よりニュース検定を導入しました。導入当初は中学3年で実施していましたが、現在では中学1年生は全員の受検、中学2年~高校3年までは希望者の受検を行っています。中学段階で2級を取得する生徒も珍しくなくなりました。

 授業では、『15歳のニュースデジタル』という中高生向けのデジタル新聞を活用し関心を高めさせながら、月イチ時事サポートの資料や問題を長期休暇中の課題などに利用しています。保護者からは「子どもが新聞をよく読むようになり、テレビニュースを見る時間も増えた」との感想が寄せられます。主権者教育の際の教材としても有効活用しています。

 2年生の現代社会、3年生の政治・経済の副教材としてN検公式テキスト基礎編を使用し、学習内容をより実社会に即した形で理解することを目標にしています。授業の導入で行っている「1分間スピーチ」でも、ニュースを調べる過程でN検公式テキストを活用し、幅広く時事問題に関心を持つ生徒が増えたと実感しています。N検に挑戦することで、学習意欲が高まり、目標を持ち真剣に取り組む姿も目にします。初めて資格を取得した生徒も多く、自信をつけたように感じました。今後も生徒のためにN検のよりよい活用法を考えていきたいと思います。

 3年生の選択授業や、総合進学コース1・2年生、クラブ選抜コース生の夏休みの課題としてテキストを利用しています。夏休み明けには全員で3級に挑戦しました。新聞やニュースではさらっと聞き流してしまっているさまざまな出来事を、深く掘り下げてくれているので、生徒同士の会話の中に「身近な問題」として「ニュース」が入ってきている実感があります。ニュース検定はAO入試や推薦入試に活用できるだけでなく、社会に対する興味関心を持つことで面接や小論文の基礎力が身につくと、進路指導の先生からも期待されています。

 本校では、国際的な視点から物事を考え表現する力を育てるための授業を多く取り入れています。その1つに「N検」の活用があります。中学1年生は全員4級を受検し、合否にかかわらず、中学2年生は3級、さらに中学3年生は準2級と上位級にチャレンジします。同学年の仲間と同じ検定級の合格を目指し、時事に多く触れることで、公民はもちろん、地理、歴史の理解・関心が深められることにこの取り組みの意義があります。また、考える力、文章・言葉で発信する力など、これからの社会で求められる能力を伸長させるためにも、プレゼン発表を行っています。

 本校は中高一貫の女子校で、中学3年生と高校2年生の全員がN検テキストを購入し、中学公民と高校現代社会の授業で副教材として使用しています。N検テキストは時事問題に関する難解なテーマを上手に整理してくれているので、大変分かりやすいです。また、N検の受検を通して、生徒たちが社会の中で役立つ知識や幅広い視野を、主体的に身につけていけるようになれば良いなと考えています。

 中3の公民分野の授業で、高校入試がない状況でも学習意欲を保つためにN検を導入しました。生徒にはおおむね好評です。同時期に、基礎をじっくり学習したい生徒と発展的な内容をどんどん学習したい生徒両方のニーズに応えるために、また多くの生徒にN検を受検してほしいこともあり、授業で発展的内容の多い公式テキストと基礎的内容の多い資料集を併用することにしました。教科書や資料集にない内容をカバーでき、教える内容の幅が広がりました。真偽不明の偏ったネット情報をうのみにする生徒が増えている中、公式テキストは広い視野を形成することにも効果的でした。本校では高校の一部でも検定を導入しており、クラブクラスではN検に合格することが目標となり、推薦入試を控えた生徒の安心材料にもなっています。